ダブりガチャ

ガチャ小説

私と後輩

明日わたそう

『またやってしまった』会社からの帰り道、後悔が押し寄せる。

新卒入社から6年が経ち、私はこの春から本格的に後輩指導を担当することになった。人に教えるって、思ったよりも難しい。先輩が私にしてくれたようにうまく教えたいと頑張るものの、日々悩むことだらけだ。

担当する後輩はやる気は十分あるけれど少し空回り気味で、まるで昔の自分を見ているよう。小さなミスからはやく抜け出してほしくて、今日は少し厳しく言いすぎてしまったかもしれない。

言い過ぎたことが頭によぎり、明日どんな風にフォローしようか、と々と考えながら歩いていると、大好きなキャラクターのガチャ®が目に入った。

ガチャ®は私の趣味の一つで、自宅にもオフィスのデスクにも、お気に入りを飾っている。最近発売されたその新作ガチャは、あと2個でコンプ、というところまで迫っていた。

『よし、まわして帰ろう』そう思って気合を入れると、見事、まだ持っていないキャラクターが出た。『やった!』小さくガッツポーズを決め、静かに上がったテンションのまま、2回目をまわす。祈りながらパカッと開くも、中身はたった今出たのとおんなじキャラクターだった。

がっかりしそうになった瞬間、『そういえば、後輩もこのキャラ好きって言ってたな』と思い出す。私のデスクを指差し、はにかみながら教えてくれた、お気に入りのキャラクター。

同じキャラを持つ両手が、なんとなく温かくなって、口角が少し上がる。少しくらいまわり道したって、私も後輩もきっと大丈夫だ。根拠はないけど、そう思う。
『ダブりのおそろ、明日わたそう』

シェアする

ミズカミエリカ

illustration by

ミズカミエリカ

Gacha Story Gacha Story Gacha Story