推しガチャ

ガチャ小説

どハマリ!

うそでしょ!?

大切に育てた一人息子。とても活発な子で、習い事や部活の応援、塾の送迎に忙しくしているうちは息つく暇もないほどだった。けれど、息子が就職を機に一人暮らしを始めてからは、私も自由な時間が持てるようになってきた。少しくらいさみしくなるかと思いきや、これはこれで楽しいものだ。

息子がいない日々にも慣れてきたある日、のんびり朝の情報番組を見ていたら、とあるアーティストにどハマりしてしまった。最近の言い方でいえば「推し」である。今までこれといった趣味もなかった私が、まさかこんなに夢中になるなんて。夫以上に私が驚いている。

すっかり沼にハマり、推し活に勤しむ中、突然息子から「結婚したい」という連絡が入った。今度の週末に彼女を連れてくると言う。世間では嫁問題も多々あるようだけれど、私は息子の生活に干渉する気はないし、息子が選んだ人なら文句はない。何より私は私で推し活に忙しいわけだし、付かず離れずの距離感で、幸せにやってくれればそれでいい。そう思っていた、のに。

当日やってきたのは、今時のかわいらしいお嬢さん。あいさつを終え、ひとしきり会話した後、連絡先を登録しようと私が手にとったスマホのロック画面を見た彼女は、「うそ!お母さん!」と取り乱し、自分のスマホ画面を見せてくる。そこには私と全く同じ、推しの写真がある。

「えーうそでしょ!?」私も思わず声をあげ、まさかの推しかぶりにひとしきり盛り上がる。「これ、ガチャ®の、持ってますか!?」と彼女がカバンから取り出したポーチは、推しがデフォルメされた絵柄だ。私もおずおずとカバンから全く同じポーチを取り出し、彼女の歓声はひときわ高くなった。呆気にとられている息子と夫を尻目に、私たちのおしゃべりは止まらない。

「お母さん、いっしょにガチャ®回しに行きましょう!!新商品出てるので!」
もちろん私も、新商品はSNSでチェック済みだ。断る理由なんて、ない。
小っ恥ずかしいけど、これはこれで楽しい日々がはじまりそう。

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イノウエノイ

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