ガチャ小説
私のこと!?
ガチャ®のこと!?
私は今、とある俳優に夢中だ。モデル出身の彼は大きな目が印象的。最近は繊細な演技で評価が上がり、バラエティにも続々出演、昨シーズン好評だった主演ドラマは、続編の映画化が決定。そして今日は、その主演映画の公開初日!
友だちを誘ってショッピングモールの中の映画館に集合したけど、わくわくし過ぎてかなり早めに着いてしまった。チケットを発券しても、ポップコーンを買っても、まだ時間はあまる。
「ほら、だから早すぎだって言ったじゃん」と、友だちに笑いながら文句を言われる。
「だって絶対遅れたくなかったんだもん!まあいいじゃん、あそこのガチャ®でもまわそうよ。」
ガチャマシンがたくさん並ぶ一画に友達をひっぱっていき、かわいい動物フィギュアのガチャ®を見つけて「これにしよう」と心に決める。ハンドルを手に取り、まわす手ごたえを感じた瞬間、視界がぐるっと回転して、目の前にパステルカラーの世界が広がっていく。
「え~~~なにこれ~~~~」
いつのまにか友だちはいなくて、私は色の渦へふわふわぐるぐるまわりながら落ちていく。向こうのほうに光が見えたと思ったら、私は映画のスクリーンの中。
「ガチャ®まわしにいかない?」推し俳優が私に笑いかける。うそでしょ!?リアルで見ると、もっとかっこいい!だいすき!しあわせ…。手をつないで歩いて行った先は、さっきまで友だちといたガチャコーナー。私がまわしたのとおなじ動物ガチャを、彼がまわす。出てきたかわいいハムスターを手に取った彼は、私の顔に近づけながら「かわいいね」と微笑む。え?今のはこのガチャ®のことだよね?でも私の目を見て言ったよね!?きゃーうそ、どうしたらいいの!!心臓飛びでそうだよ!あ~でも、遠くでママが呼んでいる気がする。愛犬チョコの散歩は、今日は私の当番だった。友だちと約束もしていたはず。でもでもまだまだ一緒にいたいのに!
そこまで思って目が醒める。見慣れた私の部屋の、見慣れたベッドの上。約束の映画は、まだこれから。なんだよ夢か~!でもいい夢だった~~~~!枕に顔をうずめながら、でもガチャ®はぜったいまわそう、と心に決める。
夢の通り早めについた映画館。見慣れたガチャコーナーに、夢とおなじガチャ®を見つけてまわしてみると、夢とおなじハムスターが出る。笑いながら友だちに夢の話をしてみたら、彼女は言う。
「じゃあそれ、自分だけの推しアイテムじゃん。得したね!」
今日の映画は、いつも以上にドキドキしちゃいそうだ。