おみやげガチャ

ガチャ小説

私と息子

がんばれよ

東京本社と仙台支社、二拠点を行き来する生活を続けて5年。私が仕事であくせく過ごす間に、仙台の自宅に住む息子はあれよあれよと成長し、この春から高校生になった。息子が小学生の頃はいろんなところへ遊びに行ったが、最近は息子も友達と遊ぶのに忙しいようだ。

久しぶりに妻と息子と、家族でゆっくり過ごした週末、進路について話す中で、息子から夢を打ち明けられた。「僕、車掌になりたいんだ」。

息子は幼い頃から電車が大好きで、休みの度にいろんな駅や博物館へ通ったし、欲しがるおもちゃも全部電車にまつわるものだった。長い間一切気持ちが変わっていなかったことに驚くとともに、自分の息子ながら心底感心する。自分が高校生の頃は、こんなに真っ直ぐな目で夢を語ることはできなかったな、と思う。「そうか、がんばれよ。父さんは応援する」できるだけ力強く、そう答えた。

そんな会話から1週間が過ぎ、本社での仕事を終えて東京駅へ向かう途中、たくさん並ぶガチャマシンの中に、息子が大好きだったカプセルプラレールを見つけた。『しょっちゅう通るのに、気がつかなかったな』と心の中でつぶやいて、久しぶりにまわしてみることにする。

1回目、いきなり出たのは先頭車。小さな息子がぴょこぴょこ跳ねて喜ぶ様子が、脳裏に鮮明にる。いいおみやげができたな、と思いつつ、カプセルに丁寧に仕舞って、カバンへ入れる。

そして少し考えてから、もう一回まわしてみると、こんどは後尾車が出た。『こっちは私のお守りだな』。カプセルから取り出し、カバンの奥にしまい込む。

カプセルプラレールのガチャ®をまわすたび、息子と一喜一憂していたあの頃。息子とまわしたガチャ®の思い出は全部、私の宝物だ。

いつもとちょっと違うおみやげを、息子はきっと照れた顔で受け取ってくれるだろう。

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ミズカミエリカ

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ミズカミエリカ

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